船宿の予約サイトで「カットウフグ」という文字を見つけて、これは何を釣る船なんだろうと手が止まった人は多いはずです。フグを釣る船だとは分かっても、カットウという聞き慣れない言葉が引っかかる。エサで食わせるのか、それとも別の釣り方なのか、竿は何を持っていけばいいのか、そもそも釣ったフグは食べられるのか。疑問がひととおり湧いてくる釣り物です。
結論から言うと、カットウフグはエサを食わせて針掛かりさせる釣りではありません。オモリの下に付けたエサでフグを寄せ、その真下に垂らした鋭い掛け針(カットウバリ)に引っ掛けて釣ります。狙う魚は主にショウサイフグで、地域によってナゴヤフグとも呼ばれます。アタリを取って合わせるのではなく、アタリの有無に関係なく一定間隔で合わせ続ける「タイム釣り」が基本になります。
この記事では、カットウ釣りの仕組みからタックル、仕掛けとエサ、誘いと合わせのリズム、海域ごとのシーズン、そして避けて通れない毒の扱いと似たフグとの見分け方まで、メーカー公式や釣り具メーカーの解説をもとに整理しました。初めてカットウ船に乗る前に読んでおけば、当日の道具選びと船上での立ち居振る舞いで迷わなくなります。
・カットウ釣りが「食わせずに引っ掛ける」釣りである理由と仕掛けの構造
・伊勢湾30号/東京湾10号と、海域でオモリと竿が変わる理由
・空アワセを3秒〜10秒間隔で入れる「タイム釣り」の組み立て方
・ショウサイフグの可食部と、自分でさばいてはいけない理由
カットウフグとは、エサを食べさせずに引っ掛ける釣りのこと

カットウフグという言葉は、正確には「カットウ釣りで狙うフグ」を指す呼び方です。魚の名前ではなく釣法とターゲットがセットになった言い方で、船宿の看板や予約ページではこの表記が使われます。まずは仕掛けの構造と、なぜこんな変わった釣り方が生まれたのかを押さえておきましょう。
オモリの下にエサ針、その下に3本の掛け針が並ぶ
カットウ仕掛けの構成は、オモリ直下のエサ針と、その下に付くカットウ針(3本バリ)の2段構造です。Honda釣り倶楽部の解説では「オモリの下のハリにアオヤギなどのムキ身をセットし、その下のカットウバリと呼ばれる鋭い3本バリで引っ掛けて釣る」と説明されています。エサ針はフグを呼び寄せて足止めするための装置で、魚の口に掛けるためのものではありません。
掛かるのはカットウ針のほうです。エサを吸い込もうと集まったフグの体に、下の3本バリを引っ掛ける。だから針は返しの効いた太軸ではなく、触れただけで刺さる鋭さが求められます。市販のカットウフグ専用仕掛けはオーナーやダイワなど各社から出ており、オモリ号数に合わせて20号〜30号が用意されています。
初めての人がつまずくのは、この2つの針の役割を取り違えることです。エサ針にフグが食いつくのを待ってしまい、いつまでも合わせを入れない。カットウ釣りでは、エサ針は「寄せて留める」役、カットウ針は「掛ける」役と割り切ったほうが動きが決まります。仕掛けは根掛かりや歯による傷みで消耗するので、当日は複数枚を持ち込むのが前提になります。
カットウ針=魚に食わせるのではなく、体に引っ掛けるための鋭い掛け針。カットウ釣りではオモリ直下のエサ針でフグを寄せ、その下に垂らしたカットウ針(3〜4本の掛け針)で掛ける。エサ針とカットウ針は役割が完全に分かれている。
主役はショウサイフグ、ナゴヤフグとも呼ばれる沿岸のフグ
カットウ釣りのメインターゲットはショウサイフグ(学名Takifugu snyderi)です。フグ目フグ科トラフグ属に分類され、ナゴヤフグ、ゴマフグ、コメフグ、スズメフグなど地域ごとの別名を持ちます。名古屋周辺でナゴヤフグと呼ばれることが、伊勢湾がカットウ釣りの本場のひとつであることとつながっています。
サイズは体長20〜30cmが中心で、最大では40cm前後まで育ちます。分布は岩手県以南の全国沿岸部で、鹿島灘、外房、東京湾などが代表的な生息域です。生息水深は50m前後までの砂地底や岩礁周りで、Honda釣り倶楽部も「水深100mより浅い沿岸部に生息。50m前後までの砂地底、岩礁周りの海底付近にいる」と記しています。つまり沖の深場ではなく、比較的浅い底付近を狙う釣りになります。
体表は黒や褐色の斑紋で、全身に棘がなく手触りが滑らかです。尻ビレは白色。この2点は後述する種の見分けで効いてくるので、今のうちに覚えておくと船上で慌てません。似た魚が混ざって釣れるのがこの釣りの特徴なので、ターゲットの外見的特徴を先に頭に入れておくことが安全にもつながります。
普通のエサ釣りでは、なぜ針掛かりしないのか
フグは硬い二枚歯を持ち、Honda釣り倶楽部の表現では「硬い二枚歯で噛み砕くほか、ハリに付いたエサはカワハギのように吸い込みながら上手に食べてしまう」魚です。歯でハリスを噛み切る力と、エサだけを吸い取る器用さを併せ持っているため、通常の食わせ釣りでは針だけ残してエサを持っていかれます。
この「エサ取りの名手」を相手にする解決策が、食わせることを最初から諦める発想でした。エサはあくまで足止め用に置き、フグが集まった瞬間に下の掛け針を跳ね上げて体に刺す。理屈が分かれば、なぜアタリを待つ必要がないのかも見えてきます。フグが吸い込んでいる最中は竿先に明確な信号が出ないことが多く、待っていると手遅れになるからです。
初心者がやりがちなのは、竿先が動くまで待ってしまう釣り方です。結果としてエサだけがきれいに無くなり、周りは掛かっているのに自分だけ釣れないという状況になります。エサが早く無くなること自体はフグが寄っている証拠なので、そこで合わせの間隔を詰めるのが正解の判断です。

竿とオモリは海域で別物、東京湾10号と伊勢湾30号の差
カットウ釣りのタックルは、全国共通の正解がありません。狙う水深が海域で倍以上違うため、オモリも竿も別物になります。ここを知らずに片方の情報だけで道具を揃えると、当日まったく釣りにならないことがあります。
竿は8:2〜9:1の先調子、長さは1.5mか1.8m
カットウ竿に求められるのは、小さな動きを鋭く伝える硬さです。調子は8:2〜9:1の先調子で、胴の入らない硬い専用竿が使われます。長さは伊勢湾のスタンダードが約1.5m、東京湾の湾フグ用が1.8m前後です。柔らかい竿だと合わせの力がオモリを持ち上げるだけで消え、カットウ針が跳ね上がりません。
理由は仕掛けの掛け方にあります。カットウ釣りの合わせは、エサに寄っているフグの体に針を刺す動作です。穂先から手元までのタイムラグが大きいほど針先の動き出しが遅れ、フグは違和感を覚えて離れます。先調子の硬い竿は穂先の微細な変化を目で拾いながら、合わせの力をそのまま針に伝えられます。
ありがちな失敗は、手持ちの軟らかい船竿で代用しようとするケースです。オモリは背負えても合わせが効かず、掛かってもバレやすい。船宿でレンタル竿を用意しているところも多いので、初回は無理に流用せずレンタルで釣り方を覚え、2回目以降に専用竿を検討するほうが遠回りになりません。
リールは小型両軸、ラインはPE1.0〜2.0号
リールは両軸リールが基本で、番手は東京湾のスタイルなら150〜200番台が使われます。ラインはPE1.0〜2.0号を約100m巻いておけば、この釣りの水深には十分足ります。播磨灘のようにカワハギ用タックルを流用するスタイルでは、PE1号を200m巻いた小型両軸が定番です。
PEを使う理由は伸びの少なさです。合わせのエネルギーをロスなく針先へ届けるには、伸びるラインは不利になります。号数を上げすぎると水中で潮を受けて仕掛けが浮き、底が取りにくくなる。逆に細すぎるとフグの歯や根ズレで切られるリスクが上がります。1.0号〜2.0号という幅は、この2つのバランスの中に収まっている数字です。
オモリは伊勢湾30号、東京湾10号。水深がそのまま出る
オモリ号数の差はそのまま水深の差です。伊勢湾の伊良湖沖〜師崎沖は水深15〜20mで、30号の六角オモリが標準になります。一方、東京湾は「ポイントの水深が10m前後となるため、オモリは10号前後、サオは1.8m前後のいわゆる『湾フグ』用が使われます」(TSURI HACK)とされ、3分の1の重さで釣ります。
六角オモリが選ばれるのは、底で転がりにくく仕掛けの姿勢が安定するためです。カットウ釣りではオモリが支点になって針が動くので、着底時に安定しないと誘いのリズムが崩れます。潮が速い日はワンランク重くする調整もありますが、船宿の指定がある場合はそれに従うのが原則です。周囲とオモリ号数が違うと仕掛けの流れ方がずれ、オマツリの原因になります。
予約時に必ず確認したいのが、この号数指定です。伊勢湾の情報を見て30号だけ持って東京湾の船に乗ると、軽い水深で仕掛けが安定せず釣りになりません。号数とグラムの対応が頭に入っていない人は、換算の考え方を先に押さえておくと現場の判断が速くなります。
| 項目 | 伊勢湾・三河湾 | 東京湾(湾フグ) | 播磨灘 |
|---|---|---|---|
| おおよその水深 | 15〜20m | 10m前後 | カワハギ場に準じる |
| オモリ | 30号の六角オモリ | 10号前後 | 仕掛け20〜30号に合わせる |
| 竿 | 約1.5mの専用竿 | 1.8m前後の湾フグ竿 | カワハギ用タックル |
| リール・ライン | 両軸+PE1.0〜2.0号を約100m | 150〜200番台+PE1.0〜2.0号 | 両軸150〜200番+PE1号200m |
| 主なシーズン | 9月〜2月 | 冬中心(周年も可) | 11月〜2月 |
カワハギ経験者・初挑戦者・大型狙い、それぞれの入り方
タイプ別に入り口を分けると、無駄な出費が減ります。カワハギ釣りの経験がある人は、播磨灘のスタイルがそのまま参考になります。カワハギ用タックルが最適とされており、両軸150〜200番台にPE1号200mという構成は、多くのカワハギアングラーが既に持っている装備です。誘いの細かさも共通点が多く、移行しやすい釣りです。
船釣り自体が初挑戦の人は、まずレンタル竿のある船を選び、仕掛けとエサだけを自分で用意する形が現実的です。カットウ竿は用途が限られる専用品なので、釣り方が体に入ってから買っても遅くありません。予約時に竿のレンタル可否と、当日のオモリ号数を確認しておきましょう。
1kg超の大型を狙いたい人は、冬の伊勢湾が候補になります。序盤は小型〜中型の数釣りで、冬季に大型が出やすいという季節進行があるためです。ただし大型が出る時期は数が落ち着くこともあり、数を釣りたいのか型を見たいのかで選ぶ時期が変わります。目的を決めてから船を選ぶと、当日の期待値のずれが起きません。
仕掛けとエサの準備で、当日の釣果の半分が決まる

カットウ釣りは道具の消耗が激しい釣りです。針は鈍り、ハリスは歯で傷み、仕掛けは根掛かりで失われます。準備の量と質がそのまま結果に出るタイプの釣りなので、ここは節約する場所ではありません。
市販仕掛けは20〜30号を3枚以上持ち込む
仕掛けはオーナーやダイワなど各社からカットウフグ専用のものが市販されており、20〜30号のサイズ展開があります。オーナーばりのインストラクターによる解説でも、市販のカットウ仕掛20〜30号を3枚以上持参することが勧められています。1枚で1日通そうとすると、失った時点で釣りが終わります。
3枚以上という数字には根拠があります。フグの歯によるハリス傷み、底を叩くことによる根掛かり、そして他人とのオマツリ。この3つが重なると1日で複数枚を消費するのは珍しくありません。予備がないと、トラブルのたびに釣りの時間が削られていきます。
号数はオモリと竿に合わせて選びます。東京湾のように10号前後の軽いオモリで釣る場合と、伊勢湾の30号では、仕掛け全体の張り具合が変わります。予約した船のスタイルに合う号数が分からない場合は、船宿に確認するのが確実です。自己判断で重い仕掛けを持ち込むと、浅場では動きが硬くなりすぎます。
エサはアオヤギ4〜5匹、キモを下向きに縫い刺しする
エサの基本はアオヤギ(バカガイ)のむき身です。石黒商店の釣り情報では「アオヤギ(バカガイ)のむき身を4~5匹たっぷり付け、キモ(内臓)が下向きになるよう縫い刺しします」と手順が示されています。播磨灘ではガラ海老が基本エサで、赤海老の剥き身や青柳が代替として使われます。
4〜5匹をたっぷり付ける理由は、匂いと存在感でフグを足止めするためです。エサ針は食わせるためのものではないので、小さく上品に付ける意味がありません。キモを下向きにするのは、匂いの出る部分をカットウ針側、つまりフグが体を寄せる位置に近づけるためです。縫い刺しにするのは、噛みちぎられても一気に外れないようにする工夫です。
エサ代を惜しんでアオヤギを1〜2匹しか付けないと、フグが寄る前にエサだけ取られて終わります。エサが早く無くなるのはフグが集まっている証拠なので、そこで付ける量を減らすのは逆効果です。減ったら惜しまず付け直し、キモが下向きになる向きを毎回そろえること。エサの量と付け直しの回数は、この釣りで自分でコントロールできる数少ない要素です。
フックシャープナーで針を研ぎ続けるのが基本作業
カットウ針は触れただけで刺さる鋭さが命で、オーナーばりの解説でもフックシャープナーで常に針を研ぐことが基本とされています。底の砂やフグの硬い体に何度も当たれば、針先はすぐ丸くなります。研ぐ道具を持たずに船に乗ると、時間が経つほど掛かりが悪くなっていきます。
針先の確認方法は単純です。爪の上に針先を当てて軽く滑らせ、引っ掛からずに滑るなら鈍っています。数投ごとに指先で確認する習慣をつけると、掛からない原因を仕掛けや誘いのせいにして迷走することがなくなります。研ぎすぎて針先を細らせないよう、軽く数回当てる程度で十分です。
掛かりが急に悪くなったときは、誘いを変える前に針先を疑うのが順番として正解です。誘いのリズムを変えても針が鈍っていれば結果は変わらず、原因の切り分けができなくなります。針先、エサの量、合わせの間隔の順にチェックすると、船上での修正が早くなります。
アタリを待たない「タイム釣り」が誘いの中心になる
カットウ釣りが他の船釣りと決定的に違うのが、合わせのタイミングです。アタリを取ってから合わせるのではなく、時間で区切って合わせ続けます。この考え方を理解しているかどうかで、同じ船に乗っていても釣果が大きく分かれます。
着底したら素早く底を切る、それから誘い始める
基本動作は、着底後に素早く底を切ることから始まります。TSURI HACKの解説では「着底後は素早く底を切り、ゆっくり竿を上げ下げして仕掛けを馴染ませます」とされています。着底したまま放置すると仕掛けが砂に埋もれ、カットウ針が本来の位置に垂れず、フグの体を捉えられません。
底を切ったあとは、ゆっくりした上下動で仕掛けを馴染ませます。ここで慌てて大きく動かすと、エサ針とカットウ針の位置関係が崩れます。オモリを支点に、エサが海底付近でゆらゆらしている状態を作るのが目標です。仕掛けが馴染むまでの数秒を省略すると、その後の合わせがすべて空振りになります。
潮が速い日は底が取りにくく、着底の感触が分かりにくくなります。ラインが斜めに流れているときは、実際の位置が思っているより後方にあるので、こまめに底を取り直すことが必要です。底が取れていない状態で合わせを繰り返しても、針はフグのいる層を通りません。
空アワセの間隔は3秒〜10秒、エサの減り方で決める
タイム釣りの中身は、オーナーばりのインストラクターの言葉を借りれば「3秒に1回、5秒に1回、10秒に1回と空合わせを入れる」というものです。TSURI HACKも「アタリの有無に関わらず、一定の間隔で空アワセを入れていく」と説明しており、この釣りの標準的な組み立てになっています。
間隔をどう選ぶかの判断材料はエサの減り方です。エサがすぐ取られる場合は短い間隔にし、フグが警戒している様子なら長めに調整します。エサが一瞬で無くなるということは、フグが仕掛けの近くに群れているということなので、3秒間隔で細かく掛けにいく価値があります。逆にエサが残り続けるなら、頻繁な合わせは魚を散らすだけです。
初めての人は、この間隔を一度決めたら最後まで変えない傾向があります。潮の速さも魚の密度も一日の中で変わるので、30分ごとに間隔を見直すつもりでいたほうが釣果は安定します。隣の人が釣れていて自分が釣れないときは、まず合わせの間隔が今の状況と合っているかを疑ってみてください。
合わせは小さくシャープに、大振りは魚を散らす
合わせの動作についてTSURI HACKは「小さくシャープにアワせるようにしましょう」と明記しています。大きく竿を振り上げるとオモリごと仕掛けが跳ね上がり、寄っていたフグが警戒して散ります。狙いはあくまで、カットウ針を短い距離だけ鋭く動かすことです。
物理的にも大振りは不利です。竿を大きく動かすほど、仕掛けが元の位置に戻るまで時間がかかります。3秒間隔で合わせるリズムを保つには、動作そのものが小さくなければ成立しません。手首のスナップだけで穂先を数十cm動かす程度のイメージが目安になります。
補助的な誘いとして、竿先を素早く細かく動かす方法もあります。カワハギ釣りのタタキに近い動きで、エサを揺らしてフグの注意を引く効果があります。カワハギ経験者はこの動きに馴染みがあるはずで、播磨灘でカワハギ用タックルが最適とされる理由のひとつでもあります。
アタリを取ろうと集中するほど釣れなくなるのが、この釣りの独特なところです。フグはエサを吸い込むように食べるため、明確な信号が竿先に出ないまま、エサだけが消えていることがよくあります。「感じ取ってから動く」のではなく「決めた間隔で先に動かし続ける」。カットウ釣りは、釣り人の集中力を穂先の観察ではなくリズムの維持に使う釣りです。
シーズンは秋から春、海域ごとに開幕と盛期がずれる
カットウ釣りは沖釣りが中心のため周年釣れる釣り物ですが、狙って釣るなら盛期があります。Honda釣り倶楽部は「秋から春にかけてが最盛期」としており、おおむね9月〜2月が主戦場です。ただし海域ごとに開幕時期と盛り上がる月が違うため、行き先を決めてから予定を組むのが実際的です。
伊勢湾は9月開幕、冬に1kg超の大型が出る
伊勢湾・三河湾のカットウ釣りは、石黒商店の釣り情報によると「9月~2月がメインシーズン。序盤は小型~中型の数釣り、冬季は1㎏超の大型も狙えます」という進行になります。9月から秋フグとカワハギが同時に開幕し、シーズンが進むほど型が上がっていくパターンです。
ポイントは伊良湖沖から師崎沖にかけての水深15〜20mで、片名漁港、師崎港、豊浜漁港などから船が出ています。ターゲットはショウサイフグが中心ですが、ヒガンフグやコモンフグが混ざることもあります。同じ船で複数種が上がるという事実は、後述する見分けの重要性に直結します。
数を釣りたいなら開幕直後の秋、型を見たいなら1月〜2月というのが基本的な選び方です。同記事は「小さなアタリを掛け、竿全体にずっしりと乗る大型フグの重量感はたまりません」と冬の魅力を書いています。ただし冬は海が荒れて出船中止になる日も増えるので、予備日を持たせた計画にしておくと空振りが減ります。
東京湾の湾フグは水深10m前後、冬の人気釣り物
東京湾では「湾フグ」の名前で親しまれ、金沢八景沖などが舞台になります。水深10m前後の浅場を10号前後の軽いオモリで釣るため、仕掛けの動きが手元に伝わりやすく、繊細な釣りを好む人に向いています。ターゲットはショウサイフグに加えてトラフグが混ざることもあります。
シーズンは冬が中心ですが、沖釣りとして周年成立するのも東京湾の特徴です。冬の釣り物として人気が高まっており、週末は予約が埋まりやすくなります。浅場で釣るぶん、潮の動きと船の位置取りが釣果に直結し、船長のアナウンスに合わせて底を取り直す動作が重要になります。
東京湾の船宿事情や出船の流れを先に知っておきたい人は、金沢八景エリアの釣り船の基本を押さえておくと当日の段取りが楽になります。

播磨灘は11月〜2月、暖冬なら3月まで続くことも
兵庫県側の播磨灘では、高砂港や姫路港などから船が出ます。オーナーばりのインストラクターは「シーズンは11月~2月がハイシーズン。記事執筆当時は暖冬で海も水温が下がりきってないので、今のところ3月まで出来そう」と、年による変動を含めて書いています。水温次第でシーズンが前後する典型的なパターンです。
この海域の特徴は、カワハギ用タックルが最適とされる釣り方の近さです。両軸150〜200番台にPE1号を200m巻いた構成で、市販のカットウ仕掛20〜30号を使います。エサはガラ海老が基本で、赤海老の剥き身や青柳も使われます。エサの選択肢が地域で違うのは、その海域で手に入りやすい素材とフグの反応の両方が反映された結果です。
シーズン終盤は年によって伸びたり早じまいになったりするので、3月に行きたい場合は出船状況を事前に確認するのが確実です。「例年11月から2月」という幅で把握しておき、前後の月は水温次第と考えておくと予定が立てやすくなります。
潮が速い日は流し釣り、緩い日は係り釣りに切り替わる
船の釣り方も潮で変わります。オーナーばりの解説では「潮が速い時間帯は流し釣りでポイントを探り、潮が緩むとピンポイントで船を止めてフグを寄せます」と説明されています。速い時間帯は流し釣りでスレていないフグを探し、緩い時間帯はアンカーを入れた係り釣りでプレッシャーを軽減するという使い分けです。
釣り人側も、この切り替えに合わせて動きを変える必要があります。流し釣りでは船が動くのでこまめに底を取り直し、係り釣りでは同じ場所を長く探るため、合わせの間隔とエサの量で反応を引き出しにいきます。船長が船を止めたのに底を取り直してばかりいると、誘いのリズムが作れません。
船の動きを見ていない人は、なぜ釣れる時間と釣れない時間があるのか分からないまま一日を終えます。アナウンスがあったら、今は流しているのか止めているのかを意識するだけで、次の一手が変わります。船の釣りは船長との共同作業だと考えると理解しやすくなります。
毒があるフグを自分でさばかない、これが最大のルール
ここからは釣り方以上に大事な話です。ショウサイフグは厚生労働省が指定する食べられるフグ類に含まれますが、それは「部位を守り、資格のある人が処理すれば」という条件つきです。釣り人が自分で処理していい魚ではありません。
テトロドトキシンは加熱でも水さらしでも消えない
フグ毒の主成分であるテトロドトキシンは、麻痺による呼吸困難を引き起こす毒です。厄介なのはその性質で、熱や酸に強く普通の調理では分解されません。さらに水にあまり溶けないため、水にさらしても無毒化しません。「よく火を通せば平気」「流水で洗えば薄まる」という発想は、この毒には通用しないということです。
症状は食後20分〜3時間程度でしびれや麻痺として表れ、ときには呼吸困難で死亡することがあります。特効薬はなく、致死率はきわめて高いとされています。つまり、間違えたときに取り返す手段がない毒です。他の食中毒と同じ感覚で「少しなら大丈夫」と考えるべき対象ではありません。
この性質を知ると、なぜフグの調理に免許が必要なのかが腑に落ちます。技術の問題であると同時に、失敗した場合の結果が重すぎるからです。釣り場や自宅での自己流処理は、危険なため行ってはいけません。
可食部は筋肉と精巣だけ、皮も内臓も食べられない
ショウサイフグの毒は皮と内臓にあり、肝臓と卵巣は極めて高毒です。可食部は筋肉と精巣(白子)のみで、筋肉は弱毒とされます。TSURI HACKの記述でも「可食部は筋肉と精巣(白子)のみ。主な調理法は刺身・湯引き、唐揚げ、鍋」と限定されています。トラフグで食べられる部位の感覚をそのまま持ち込むことはできません。
種によって食べられる部位が異なるという点が、フグという魚の難しさです。同じ船で釣れた別種のフグが同じ部位を食べられるとは限りません。だからこそ、船宿で種を判別し、資格を持つ人が部位を分けるという流れが必要になります。
身の味については、プリッとした弾力のある食感とフグ特有の旨味が持ち味です。処理後に冷蔵庫で数日寝かせると水分が落ち、身が柔らかくなって旨みが濃くなるとされます。釣ったその日に食べるより、少し置いたほうが持ち味が出るタイプの魚です。
船宿にはフグ調理師がいる、持ち込み処理が基本の流れ
カットウ釣りの遊漁船にはフグ調理師が常駐しており、TSURI HACKも「釣りの遊漁船ではフグ調理師が常駐しており、素人調理はしないようにしてください」と明記しています。釣ったフグは船宿で処理してもらい、可食部だけを持ち帰るのが標準的な流れです。処理の可否や料金体系は船宿ごとに違うので、予約時に確認しておきましょう。
未処理のフグを丸のまま持ち帰ったり、釣り仲間に譲ったりするのは避けてください。受け取った側が自己流で処理すれば、そのまま事故につながります。テトロドトキシンには特効薬がなく、加熱も水さらしも効きません。処理は船宿のフグ調理師に任せ、持ち帰るのは処理済みの可食部だけ。自治体によって取り扱いのルールが定められている場合もあるため、迷ったら船宿と自治体の案内に従ってください。
フグの処理が免許を持つ人の仕事である理由や、食用として認められている種の考え方については、さばき方の側から整理した記事も参考になります。

船上で似たフグが混ざる、見分けは尻ビレと棘で確認する
カットウ釣りではショウサイフグ以外のフグも針に掛かります。種によって毒のある部位が違うため、見分けは味の問題ではなく安全の問題です。船上で自分が何を釣ったのかを言えるようにしておきましょう。
ショウサイフグの目印は白い尻ビレと棘のない体
ショウサイフグの特徴は、黒や褐色の斑紋、全身に棘がない滑らかな体、そして白色の尻ビレです。TSURI HACKは「ショウサイフグは体表の模様が白い網目模様で、尻びれが白く、尾びれの下縁が白く、背中や腹部にトゲがない」と説明しています。体表を軽くなでたときの感触と、尻ビレの色。この2点が基本のチェックポイントになります。
マフグとの区別も尻ビレの色で付きます。ショウサイフグが白いのに対し、マフグは黄色です。シマフグは独特な縞模様と黄色いヒレを持ち、外見の印象が大きく異なります。ヒレの色は乾くと分かりにくくなるので、上がった直後の濡れている状態で確認するのが確実です。
魚の同定は、複数の特徴を組み合わせて判断するのが原則です。模様だけ、ヒレだけで決めると、個体差や光の当たり方で誤ります。斑紋の様子、棘の有無、尻ビレの色を順に見て、3つが揃って初めて「たぶんショウサイフグ」と考えるくらいの慎重さが適切です。
コモンフグは棘がある、クサフグは小さくて腹に棘
混同しやすいのがコモンフグです。TSURI HACKによれば「ショウサイフグは表面に棘がなく、コモンフグは体表に棘があるので、触って混同する可能性は低い」とされ、さらに「コモンフグは体表の模様がほぼ円形の小さな白い斑点で、尻びれが淡黄色で、お腹や背中に小さい棘が密生している」と特徴が示されています。模様は網目か円形の斑点か、尻ビレは白か淡黄色か、という対比です。
クサフグはかなり小さく、お腹に小さな棘が多数あります。トラフグはかなり大きく模様も大きく異なるため、サイズの時点で区別が付きます。ヒガンフグは全体的に茶色い体色で、伊勢湾のカットウ釣りでは混ざって釣れることがあります。種によって毒性が異なるため、コモンフグとの混同は危険とされています。
船の上で図鑑を広げるのは現実的ではないので、上がった魚の写真をスマートフォンで撮っておくのが実用的です。体側、腹側、尻ビレが分かる角度で撮っておけば、後から確認できます。ただし判断そのものは、その場で船宿側に任せるのが安全です。
迷ったまま持ち帰らない、それが最後の安全弁
初心者がやりがちな失敗の2つ目が、種を確定しないまま「たぶんショウサイフグだろう」とクーラーに入れてしまうことです。船上では複数種が混ざり、しかも似た模様のフグが同じ場所で釣れます。名前が分からない魚は分からないまま、船宿の判断を仰いでください。
この失敗が危ないのは、誤りに気づく機会が後から来ないためです。処理してしまえば見た目からは種が分からなくなり、食べるまで誰も間違いに気づけません。毒に特効薬がない以上、間違えないための工程は入口の判別しかありません。
ルールとして押さえておきたいのは、フグに関しては自己判断の余地を作らないことです。判別も処理も専門の人に任せる。釣り人の仕事は、掛けて取り込んで、正しく渡すところまでと考えておくと迷いません。
持ち帰りは氷締めと低温維持、寝かせるのは処理後から
釣った魚の鮮度管理は、フグでも他の魚と同じく低温維持が基本です。クーラーボックスに氷と海水を用意し、上がった魚を早めに冷やして低温を保ちます。船上での血抜きや内臓処理は行わず、丸のまま冷やして船宿に渡すのが流れになります。
寝かせて旨みを引き出すのは、資格を持つ人が処理した後の話です。処理後に冷蔵庫で数日寝かせると水分が落ち、身が柔らかくなり旨みが濃くなるとされます。刺身・湯引き、唐揚げ、鍋といった食べ方があり、プリッとした食感が持ち味です。
釣り場から自宅までの時間が長い場合は、保冷力に余裕のあるクーラーを選び、氷を多めに用意しておくと安心です。フグは水温の下がる時期に釣る魚なので夏場ほど神経質になる必要はありませんが、車内は季節を問わず温度が上がります。持ち帰り前提の釣りでは、クーラー選びも準備の一部です。
まとめ:カットウフグはリズムと安全管理の釣り
カットウ釣りは、フグがエサだけを吸い取ってしまう習性への回答として生まれた釣り方です。エサ針は寄せる装置、カットウ針は掛ける装置と割り切れば、アタリを待たずに合わせ続けるという一見不思議な組み立ても筋が通って見えてきます。竿は8:2〜9:1の先調子、ラインはPE1.0〜2.0号、オモリは伊勢湾なら30号、東京湾なら10号前後。仕掛けは20〜30号を3枚以上、エサはアオヤギならキモを下向きに4〜5匹。この数字を押さえておけば、初めての船でも準備で困ることはありません。
シーズンは秋から春が最盛期で、伊勢湾は9月〜2月、播磨灘は11月〜2月、東京湾は冬中心に周年成立します。数を釣りたいのか大型を見たいのかで、行く月と海域を選び分けてください。当日は針先を数投ごとに確認し、エサの減り方を見ながら合わせの間隔を調整する。この2つを繰り返すだけで、船上での修正力は確実に上がります。
最初の一歩としては、レンタル竿とフグ処理に対応している船を予約し、オモリ号数を確認してから仕掛けとエサを買いに行くのが確実です。そして釣った魚は種の判別も処理も自分でやらず、船宿に任せる。テトロドトキシンには特効薬がなく、加熱も水さらしも効きません。この一線を守ることが、この釣りを長く楽しむための条件です。
※シーズン・出船状況・タックル指定は年や船宿によって変わります。最新の情報は各船宿および自治体の案内でご確認ください。

コメント