初めて乗合船を予約したあと、多くの人が同じところで手が止まります。「竿とリールは船宿で借りられるらしいけれど、自分では何を持っていけばいいのか」。港に着いてから足りないものに気づいても、沖に出てしまえば取りに戻ることはできません。船釣りの持ち物選びが陸の釣りと決定的に違うのは、この「やり直しがきかない」という一点です。
結論から書きます。船釣りの持ち物は、突き詰めると14点で足ります。そのうち本当に妥協できないのは、ライフジャケット・クーラーボックス・雨具・滑らない靴・酔い止めの5つ。竿もリールも仕掛けも、多くの乗合船ではレンタルや船内販売でどうにかなりますが、この5つは代わりがききません。逆にいえば、この5つさえ押さえれば、あとは当日の釣り物に合わせて足していくだけです。
この記事では、国土交通省が定めるライフジャケットの安全基準や海上保安庁の釣りの安全情報といった公的な資料と、メーカー公式のスペックをもとに、船釣りの持ち物を「なぜ必要か」から整理します。単なるリストの丸写しではなく、容量や号数といった数字の根拠まで踏み込むので、次の釣行の荷造りがそのまま終わるはずです。
・船釣りの持ち物14点と、そのうち代わりがきかない5点の見分け方
・ライフジャケットが浮力7.5kg以上でなければならない法的な理由とTYPEの選び分け
・クーラーボックスが35L以上と言われる根拠と、船上でのサイズの決め方
・酔い止め薬を乗船30分前ではなく2〜3時間前に飲む理由
船釣りの持ち物は14点|借りられる物と代わりがきかない物の線引き
船釣りの荷造りでつまずく原因は、持ち物を一列のリストとして眺めてしまうことにあります。竿もライフジャケットも酔い止めも同じ重みで並んでいると、優先順位がつきません。まず「船宿が用意してくれる物」「借りられるが自前が望ましい物」「絶対に自分で持つ物」の三層に分けると、当日の朝に慌てる場面がなくなります。
まず14点を一枚で把握する
下の表が、乗合船に乗るときの持ち物の全体像です。海釣りの教科書が、国土交通省のライフジャケット安全基準、海上保安庁の釣りの安全情報、メーカー公式のスペック情報をもとに整理しました。判断基準の欄には「何を見て選ぶか」を入れてあるので、店頭で迷ったときはここを見返してください。
| 層 | 持ち物 | 判断基準 |
|---|---|---|
| 代わりがきかない | ①ライフジャケット | 桜マーク付き・浮力7.5kg以上・TYPE A |
| ②クーラーボックス | 船釣りは35L以上が下限の目安 | |
| ③雨具(上下) | サロペットタイプ・二重袖 | |
| ④滑りにくい靴 | かかと付き・つま先が保護される形 | |
| ⑤酔い止め薬 | 乗船の2〜3時間前に飲めるよう前倒しで用意 | |
| 借りられるが自前が望ましい | ⑥竿 | 当日のオモリ号数が錘負荷の範囲に入るか |
| ⑦リール(道糸巻き済み) | 船宿指定のPE号数が必要量巻けるか | |
| ⑧仕掛け・替えバリ | 予約時に聞いた指定仕掛けを複数組 | |
| ⑨ハサミ・プライヤー類 | 錆びても惜しくない小型のもの | |
| 快適さと安全を支える | ⑩帽子・偏光サングラス | 飛んでも困らない安価なもの+あご紐 |
| ⑪タオル・ウェットティッシュ | 手を拭く用と魚を掴む用で複数枚 | |
| ⑫飲料・軽食 | 夏は1人あたり最低3リットル(酒類を除く) | |
| ⑬防水ケース入りの携帯・身分証 | 濡れる前提で完全防水を選ぶ | |
| ⑭応急手当キット・日焼け止め | 防水タイプの絆創膏と消毒液を小分けで |
この14点に、クーラーへ入れる氷とゴミ袋を足せば荷造りは完成です。氷は船宿で用意している場合と各自持参の場合があるので、予約の電話で必ず確認しておきます。
船宿が用意してくれる物は意外と多い
乗合船に乗るとき、コマセ(撒き餌)・付け餌・氷は料金に含まれているか、当日に船内で買える形が一般的です。竿とリールも多くの船宿がレンタルを用意しています。つまり「道具一式を揃えないと船に乗れない」というのは思い込みで、初回はレンタルで済ませて船釣りが自分に合うかを確かめる方が合理的です。
ただし、何が含まれるかは船宿ごとに完全に異なります。餌代が別料金の船、氷が持参の船、レンタル竿の在庫が限られる船があるので、予約時に「乗船料に含まれるもの」「レンタルの有無と料金」「氷の扱い」の三点を口頭で確認するのが確実です。ウェブサイトの記載が更新されていないことも珍しくないため、電話で押さえておくと当日の予算がぶれません。
一方で、ライフジャケットは貸出用を備えている船が多いものの、サイズが合わない、前の人の使用で湿っているといった場面が起こります。着用義務がある装備を人任せにするのは落ち着かないので、続けるつもりがあるなら最初に買う一点として推せます。
読者タイプ別|どこから買い揃えるか
持ち物の揃え方は、その人が船釣りとどう付き合うかで変わります。年に一度、家族で堤防の延長として乗る人が高価な竿を買う必要はありません。逆に、月に一度は通うつもりの人がレンタルを使い続けると、道糸の巻き癖や竿の調子が毎回変わり、上達の手応えが得られなくなります。
年数回のライト層は、ライフジャケット・雨具・靴・クーラーの4点だけ自前にして、竿とリールはレンタルで通す形が費用対効果に優れます。月一回通う中間層は、これに汎用の船竿とPEを巻いたリールを足すと、狙う魚が変わっても道具を使い回せます。特定の釣り物にのめり込んだ人だけが、専用竿や電動リールを検討する段階です。順番を逆にすると、使わない道具が家に積み上がります。
「現地で買えばいい」が通用しない理由
港の近くに釣具店があるから当日でも大丈夫、という考え方は船釣りでは通りません。出船は夜明け前後が中心で、その時間に開いている釣具店は限られます。開いていたとしても、その日の船の仕掛けに合う号数の在庫があるとは限らず、慌てて選んだ仕掛けが指定と違えば、船上で自分だけ釣りにならない事態になります。
出船前の港は暗く、駐車場から乗り場まで距離があり、荷物を担いだまま右往左往する余裕はありません。前日の夜のうちに、①ライフジャケットを着てみる、②クーラーを開けて氷と飲料を入れる、③仕掛けの袋を数える、この3動作を済ませておくと、当日の朝は車に積むだけになります。一度沖に出れば途中で戻れない以上、準備の抜けはそのまま釣りの中身に響きます。
まず買うべきはライフジャケット|浮力7.5kgは法律で決まった数字
船釣りの持ち物で唯一、法律が具体的な性能を指定しているのがライフジャケットです。ここだけは好みで選ぶ余地がありません。小型船舶の船室外の甲板上では、原則としてすべての乗船者に国の基準に適合したライフジャケットを着用させることが船長の義務とされ、違反すると船長に違反点2点が付与されます。つまり、あなたの装備が船長の免許に影響する構造になっています。
桜マークは「浮力7.5kg以上」の合格印
国土交通省が公開しているライフジャケットの安全基準によると、小型船舶用救命胴衣の性能要件は小型船舶安全規則第53条に規定され、浮力は7.5kg以上と定められています。小児用は体重帯ごとに分かれ、体重15kg未満の区分では浮力4.0kg以上、その上の区分では5kg以上です。この7.5kgという数字は、7.5kgの鉄片を水中に吊り下げても浮いていられる浮力を意味し、頭部を水面上に出してリラックスして浮ける状態を想定しています。
あわせて、誤った方法で着用できない構造であること、非常に見やすい色であること、顔面を水面上に支持できること、笛がひもで取り付けられていることが要件として並びます。笛が付属品ではなく要件に入っている点は見落とされがちですが、落水者を探すのは目より耳が先になる場面があるためです。基準を満たした製品には桜マークが付きます。
桜マーク=国土交通省の型式承認を受けたライフジャケットに付く表示。プロトタイプに対して型式承認試験を行い、設計・性能・工作精度と製造能力を確認したうえで承認され、以後の製品は検定で基準適合が確認される仕組み。通販サイトで「浮力ベスト」として売られている製品の中には、この承認を受けていない“見た目だけ”のものが混ざるため、商品ページで桜マークとTYPE表示の有無を確かめる。
TYPE AからGまで、乗合船で選ぶのはA
最近のライフジャケットには『TYPE A』のようなタイプ表示があり、搭載できる船の航行区域が変わります。TYPE Aは全ての小型船舶に法定備品として搭載でき、黄色やオレンジなどの発見されやすい色、サーチライトを反射する反射材、ホイッスル、浮力7.5kg以上という条件をすべて備えます。沖に出る乗合船に乗るなら、迷わずTYPE Aを選んでおけば区域で困ることがありません。
TYPE DとFは平水区域・2時間限定沿海区域・沿岸区域を航行する船に搭載できるタイプで、色の自由度が上がる代わりに使える範囲が狭まります。TYPE Fは反射材やホイッスルの要件が外れ、TYPE Gは小型船舶用浮力補助具にあたり、平水区域で一定の条件を満たす船に限られます。安く見えるモデルがTYPE GやDだった、という買い間違いは実際に起こります。

膨脹式と固定式、船釣りで迷ったときの決め方
構造で見ると、浮力体に発泡プラスチック等を使う固型式と、炭酸ガスで膨らませる膨脹式に分かれます。固型式はチョッキ式・首掛け式・ジャンパー式があり、点検の手間がなく、着ていること自体が浮力になります。膨脹式は薄くて動きやすく、暑い時期の負担が小さい代わりに、ボンベの残量や自動作動装置の期限という管理が発生します。
初めての一着なら固型式が扱いやすい選択です。膨脹式は水に浸かると自動で膨らむ自動式と、紐を引いて作動させる手動式があり、作動すればボンベから気密袋にガスが入りますが、膨らみが足りないときは息で補充します。この操作を落水時に落ち着いてできるかを考えると、慣れるまでは着ているだけで浮く方式に分があります。なお、船宿によっては膨脹式の持ち込み可否や点検状況を確認されることがあるので、購入後は作動装置の期限をメモしておくと安心です。
濡れる・冷える・眩しいを潰す|雨具と靴で釣りの質が変わる
船の上は、雨が降らなくても濡れます。走行中の波しぶき、コマセを詰めた手、魚の血のり、そして前日の洗浄で湿ったままの座面。この環境で普段着のパンツを履いていると、朝一番の移動でお尻が濡れ、あとは終日冷えと戦うことになります。雨具は雨のための装備ではなく、船上の作業着だと考えると選び方が変わります。
船の雨具はサロペット一択と言われる理由
防水性を最重視する船釣りでは、胸部や背中まで生地が覆うサロペットタイプのパンツが定番です。サスペンダーで吊るため、しゃがんでもずり落ちる心配がなく、腰からの浸水も防げます。上着は袖口から水が入らない二重袖の構造と、フードを被っても視界が確保できる形かどうかを店頭で確認します。この3点を満たしていれば、価格帯が上でも下でも船上での不快感はかなり抑えられます。
素材は透湿性のあるゴアテックスなどと、塩化ビニール樹脂(PVC)やポリウレタン系に大別されます。動きやすさと蒸れにくさを取るなら透湿素材、汚れの落としやすさと防水性・耐久性を取るならPVCやポリウレタンです。船上では座ったり立ったりを繰り返すため、擦れて穴が開いてしまえば防水ウェアの意味がなくなります。生地の厚みとお尻まわりの補強は必ず見ておきたい部分です。
雨具は「サロペット・二重袖・フード視界」の3条件で絞り、素材は動きやすさ重視なら透湿系、洗いやすさ重視ならPVC・ポリウレタン系。年間を通じて波しぶきがある以上、晴天予報の日でも積み込むのが船釣りの標準装備です。
靴はヒールを避け、かかと付きを選ぶ
船の甲板は濡れて滑ります。基本条件は「滑りにくく、濡れてもいい靴」で、濡れや汚れが多い釣りならレインブーツ、動きやすさを取るならスニーカー、水陸両用のシューズも選択肢に入ります。暑い季節はサンダルでも構いませんが、底面が滑りにくく、かかと付きのタイプに限ります。ヒールの高い靴は季節を問わず転倒の危険があり、船上では選んではいけません。
加えて見落とされがちなのが、つま先の保護です。船上ではオモリや道具箱が転がり、揺れに合わせて足元に当たります。つま先が露出したサンダルだと、ちょっとした接触で釣りどころではなくなります。乾きやすさも重要で、朝一番に濡れた靴が乾かないまま終日過ごすと、体温が奪われて集中力が落ちます。優先順位は安全性、快適性、見た目の順で決めるのが失敗しない道筋です。
服装は雨具の下で調整する
船上の体感温度は、陸の予報より低く出ます。走行中は風速がそのまま体に当たり、汗をかいたあとに冷えるためです。雨具を一番外側に置き、その内側で重ね着を調整するのが基本形になります。真夏でも薄手の長袖を1枚持ち、冬場は雨具の下に着込める余裕を持ったサイズを選んでおくと、季節をまたいで同じ雨具が使えます。

竿・リール・ラインは船に合わせて決まる
船釣りの道具選びが陸と違うのは、狙う魚ではなく「その日の船が使うオモリ」から逆算する点です。同じアジでも、東京湾のライトな釣りと相模湾のコマセ釣りではオモリが変わり、必要な竿も変わります。予約時に船宿へ確認すべき最重要事項は、実は魚種ではなくオモリの号数と道糸の指定です。
竿は錘負荷のレンジで選ぶ
船竿のスペック表には錘負荷という項目があり、その竿が扱えるオモリの範囲が号数で書かれています。当日のオモリがこのレンジの真ん中あたりに収まる竿を選ぶと、仕掛けの重さで穂先が入りすぎることも、当たりを弾くこともありません。汎用の船竿を1本だけ持つなら、20〜80号あたりを扱えるモデルが近海の釣りをよくカバーします。
メーカー公式の表記ルールを知っておくと、型番から中身が読めます。シマノのライトゲームBBを例にすると、アイテム名は調子を表す64・73・82、強さを表すM・MH・H、長さの数値の3つで構成され、73MH230なら7対3調子・強さはMH・全長2.3mを意味します。公式の想定価格は税別で2万円台に収まり、アジからヒラメまで幅広い魚に対応するエントリー帯のシリーズです。
| 型番の読み方 | 調子(64・73・82)+強さ(M・MH・H)+長さ |
| 錘負荷の目安 | 73M195は15〜60号、73MH230は20〜80号、73H195は30〜100号 |
| 構造の特徴 | ハイパワーX構造のブランクス、糸絡みを抑えるKガイド、穂先はグラスソリッド |
| 向いている用途 | アジ・マダイ・タチウオ・ヒラメ・イサキなど近海の五目釣り |
PEラインは「最も細い号数」から考える
船釣りの道糸はPEラインが主流です。号数は単なる太さの違いではなく、仕掛けの落ちやすさ・潮への強さ・大物への対応力を同時に決めます。原則は、狙う魚と水深に対して成立する範囲で最も細い号数を選ぶこと。細ければ仕掛けがスッと落ち、潮に流されにくく、感度も上がります。
目安として、0.6〜1号は細さの利点が大きい反面、根ズレや結び目で切れやすくなります。1.5〜2号はライトな釣りから中深場まで対応する汎用域で、最初の1台に巻くならここです。3〜8号は大物の引きや根ズレに強い一方、太いぶん潮を受けて仕掛けが流されます。強度で見ると2号でおよそ35〜40lb、キロ換算では18kg前後が目安になります。
編み方も選択に関わります。4本編みはコシが強く耐摩耗性に優れ価格を抑えやすく、8本編みは表面が滑らかで糸鳴りが少なく飛距離が出ます。深場を釣るなら10m間隔で色が変わるマルチカラーが便利で、今どれだけ落ちたかが目で分かります。号数だけで判断せず、パッケージのlb値やMAX kg値で実強度を確認する習慣をつけると、想定外の高切れが減ります。
結束強度を軽視すると全部が無駄になる
直線強度がいくら高くても、結束強度が低ければ意味がありません。PEとリーダーの接続部、リーダーと仕掛けの接続部は、必ずどこかが最弱点になります。前日に家で結んでおき、指で引いて抜けないことを確かめてから積み込むと、船上で結び直す時間を釣りに回せます。船の上は揺れて手元が定まらず、暗い時間帯に細い糸を扱うのは陸の何倍も骨が折れます。
オモリの号数とグラムの関係が頭に入っていないと、錘負荷の判断そのものが曖昧になります。号数換算に不安がある場合は、先に換算の基準を押さえておくと竿選びが速くなります。

クーラーボックスは35Lが下限|持ち帰りの質は容量で決まる
持ち物の中で最もサイズ選びを間違えやすいのがクーラーボックスです。堤防で使っていた小型のものを流用して船に乗り、釣れた魚が入らずに困る、という展開は初回に起こりがちです。船釣りは陸の釣りより魚が大きく、数も出ます。容量は「今日釣れそうな量」ではなく「よく釣れた日」を基準に決めます。
容量は35L以上、狙う魚で上げていく
船釣りのクーラーボックスは最低35リットルが欲しいところ、というのが釣り情報サイトの共通した見立てです。それ以下だと良い釣果の時に入り切らない可能性があり、マダイや青物などが入らないことがあります。一般的な目安としては30〜50Lの範囲で、対象魚に適した大きさを選ぶ形になります。
| 項目 | 17〜20L | 30〜35L | 50L以上 |
|---|---|---|---|
| 主な対象 | アジなど小型魚 | 中型魚・小型魚の数釣り | 青物・大型魚 |
| 性格 | コンパクトで軽く運びやすい | 容量と携行性のバランス型 | 大容量で堅牢 |
| 船釣りでの位置づけ | 堤防向き。船では容量不足になりやすい | 乗合船の標準域 | 大物狙いの専用機材 |
船上はスペースが限られている
容量が大きければ良いという単純な話でもありません。乗合船の釣り座は隣と近く、通路にはみ出したクーラーは他の釣り人の動線を塞ぎます。船上はスペースが限られるため、自分の釣り座に収まり、他の釣り人の邪魔にならないサイズを選ぶのが前提条件です。50L超のモデルを買うのは、狙いが大型魚に定まってからで構いません。
構造面では、片手で開けられるラックトップレバーや両開きのモデルがあると、片手に魚を持ったまま蓋を開けられます。また、船上ではクーラーが椅子代わりになる場面が多く、座って擦れても壊れない堅牢な作りかどうかが寿命を分けます。安価なモデルは蓋のヒンジから壊れることが多いので、店頭で蓋を強く押して確かめておくと判断がつきます。
氷は多めに、夏は特に
クーラーは容器であって冷蔵庫ではありません。保冷力は氷の量に強く依存し、夏場は氷を複数入れて保冷性能を維持することが要点になります。魚を入れるたびに蓋を開ければ冷気が逃げるため、飲料用と魚用でクーラーを分けるか、飲料はソフトクーラーに移す運用も有効です。
堤防用の20L前後を船に持ち込み、青物が1本入った時点で蓋が閉まらなくなる——これが最も多い容量ミスです。原因は「自分がそんなに釣れるはずがない」という見積もりで、良い日の釣果は前提を軽く超えます。対策は単純で、船釣り用は35L以上を基準に選び、氷を入れた状態で魚が入る余白を残すこと。折り曲げて詰め込んだ魚は身が傷み、持ち帰ってからの価値が落ちます。
船酔い対策は当日の朝ではなく前日から始まる
持ち物の話をするとき、酔い止め薬は「念のため」の扱いになりがちです。しかし船酔いは、釣りの成否をライフジャケット以外で最も左右する要素です。一度気分が悪くなれば、仕掛けを見るために下を向く動作すらできなくなり、あとは帰港まで耐えるだけの時間になります。だからこそ、対策は薬の有無ではなく飲むタイミングの設計です。
薬は乗船2〜3時間前に飲む
市販の酔い止め薬には「乗船30分前に服用」と書かれているものが多いのですが、船釣りの現場では乗船の2〜3時間前に飲むのが最適とされています。この前倒しによって、波が荒れるシケの日でも船酔いすることがほとんどなくなる、という見方が定着しています。理由は単純で、薬が血中で効き始めるまでに時間が要り、揺れが始まってからでは間に合わないためです。
飲むときの条件として、お腹に何もない状態が推奨されます。出船が早い船なら、起きてすぐ薬を飲み、車での移動中に効かせて、港に着く頃には効果が立ち上がっている流れが理想です。ただし体質によって眠気の出方が違うので、初めて使う薬は釣行前に一度試しておくと当日の判断が楽になります。
持ち込む食べ物で差がつく
船酔い対策として、梅干し、しょうが味の飴、ミント味のガムが挙げられます。いずれも口の中に強い刺激を残し、揺れへの意識をそらす働きが期待できるものです。逆に、脂っこい食事や食べ過ぎは避け、酔いやすさに配慮した軽食を選びます。空腹すぎても気分が悪くなるので、消化のよいものを少量ずつ、が落としどころです。
飲料は夏場で1人あたり最低3リットルが目安とされ、これには酒類を含みません。船上ではトイレの都合から水分を控えたくなりますが、脱水は体調不良と船酔いを同時に呼び込みます。乗合船にはトイレがある船が多いので、予約時に確認したうえで、必要な水分は普通に取る方が結果的に安全です。
船上での過ごし方も持ち物のうち
船に乗ったら下を向かず、遠くの景色を眺めるのが基本です。仕掛けを結ぶ、スマートフォンを見るといった下向きの作業は、揺れと視界のずれを増幅させます。だからこそ、仕掛けを前日に組んでおくことが船酔い対策として効いてきます。持ち物の準備と体調管理は、別々の話ではなくつながっています。
それでも気分が悪くなったら、船室に閉じこもるより風の通る場所で水平線を見る方が回復は早いとされます。無理に釣り続けず、船長に一声かけて休むのも判断のうちです。周囲に迷惑をかけまいと我慢して倒れる方が、結果的に船全体に負担をかけます。
忘れがちな小物と、当日の安全を左右する装備
ここまでの装備が揃えば釣りは成立します。しかし、実際の船上で「あってよかった」と感じるのは、リストの下の方に書かれた小物であることが多いものです。海上保安庁も釣りの安全情報を公開しており、装備の抜けが事故につながる構図を繰り返し示しています。
手を守る小物と応急手当キット
魚のヒレ、ハリ、ハサミ、コマセの塩分。船上では手を傷つける要素が集中します。応急手当キットとして、防水タイプの絆創膏、消毒液、バンドエイドをまとめた小さなポーチを一つ用意しておくと、傷が海水に触れ続ける事態を避けられます。かさばるものではないので、クーラーの隅に入れっぱなしにしておく形が現実的です。
あわせて、笛、ライト(懐中電灯)、レスキューナイフが安全装備として挙げられます。笛はライフジャケットに付属していることが多いので、購入時に付いているかを確認しておきます。ライトは夜明け前の準備と、帰港後の片づけで使います。手元が見えないまま仕掛けを扱うと、それだけでハリが刺さるリスクが上がります。
携帯電話・身分証・偏光サングラス
携帯電話は防水ケースに入れるのが前提です。波しぶきは思っている以上に届き、ポケットの中でも濡れます。身分証(保険証や免許証等)もあると便利で、万一の際の対応が速くなります。財布ごと海に落とす事故を避けるため、必要なものだけを防水ケースにまとめる形が扱いやすいでしょう。
偏光サングラスと帽子は、日差し対策であると同時に安全装備です。船上では他人が投げた仕掛けやオモリが飛んでくる可能性があり、目を覆うものがあるかどうかで結果が変わります。SPFの高い日焼け止め、タオル、ウェットティッシュも定番で、海面の照り返しは陸より強く働きます。
実は、道具より先に「船を選ぶ目」を持ちたい
意外と知られていませんが、船釣りの安全は個人の持ち物より船側の設備に大きく左右されます。国土交通省は、知床の遊覧船事故を受けた検討を経て、旅客船や遊漁船に対して、陸上との間で常時通信できる法定無線設備、海難発生時に自船位置情報を発信する非常用位置等発信装置、荒天時に落水せず乗り移りが可能な救命いかだ等、沈没を防ぐ隔壁の水密化等という4つの安全設備の義務化を進めています。
また、遊漁船業務主任者の要件も強化され、実務研修は従来の10日から30日に延ばされ、船釣り・瀬渡し・漁業体験といった業態ごとの受講が求められる形になりました。つまり、あなたが装備を揃える一方で、船宿側にも制度的な安全水準の引き上げが進んでいるということです。予約先を選ぶとき、公式サイトや電話口で安全設備や装備の説明が明確に返ってくるかは、一つの判断材料になります。
ライフジャケットは船で借りられるのに、自分で買う意味はありますか?
貸出用を備える船は多いので、初回はそれで問題ありません。ただし、貸出品はサイズ展開が限られ、体格に合わないと本来の浮力が発揮されにくくなります。着用が船長の義務として定められている装備である以上、続けるつもりがあるなら、桜マーク付きTYPE Aの自分に合う一着を最初の投資先にする価値があります。
ゴミ袋と、帰りの動線まで考える
意外に効くのがゴミ袋の複数枚持参です。使い終わった仕掛けの袋、濡れたタオル、汚れた雨具を分けて入れられると、車内が汚れません。船宿によってはゴミの持ち帰りを求められるので、袋がないと荷物の置き場に困ります。帰りの車で座席が塩と魚の匂いに侵食される事態を避けるには、大きめのビニール袋が2〜3枚あれば足ります。
船釣りの持ち物まとめ|代わりがきかない5点から揃える
船釣りの荷造りは、持ち物を三層に分けた時点でほぼ終わります。船宿が用意してくれるコマセ・付け餌・レンタル竿を差し引き、残った「自分でしか用意できないもの」に絞れば、初回に買うべき物は5点だけです。ライフジャケットは法律が浮力7.5kg以上と定めた装備、クーラーは35L以上が船釣りの下限、雨具はサロペット、靴はかかと付き、酔い止めは2〜3時間前。この5つの数字と条件を覚えておけば、店頭でも通販でも迷いません。
最初の一歩としておすすめしたいのは、予約の電話で「乗船料に含まれるもの・レンタルの有無・氷の扱い・当日のオモリ号数と道糸の指定」の4点を聞くことです。この確認だけで、買う必要のない道具が消え、持って行くべき仕掛けが決まります。あとは前日の夜にライフジャケットを着てみて、クーラーに氷を入れ、仕掛けの袋を数えるだけです。
なお、船宿ごとの含まれるもの・レンタル在庫、そして遊漁船に関する制度は更新されます。乗船前には国土交通省のライフジャケットの安全基準、ライフジャケットの種類と特徴、海上保安庁の釣りの安全情報、水産庁の遊漁の部屋など、公的機関の最新情報をあわせて確認してください。
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